岡伊三郎商店 岡和正さん

ゴリラの鼻くそ で天狗になるさ

 「ゴリラの鼻くそ」は知っていても、島根県出雲市の有限会社岡伊三郎商店さんが作っている事を知っている方は多くないと思います。

 「ゴリラの鼻くそは、えっ、島根県の会社なの?」と知ってから、どんな人が作っているんだろうと思い始めたら、どうしても会いたくなり「代表取締役 岡和正様」にお時間を頂戴しました。

 人と違うところに勝機があると信念を持つ岡社長は「黒豆」→「鼻くそ」→「ゴリラの鼻くそ」→「動物園」とシナリオを描いて全国の動物園を飛び回ったそうです。

 ネーミングだけではなくブルドーザーのような岡社長の営業が功を奏して程なく大ブームが到来し、全国の動物園から注文が殺到したそうです。

 講演やマスコミからの取材依頼、金の臭いがするところには、様々な人がすり寄ってきます。

 岡社長も人間です。

 もれなく「天狗になった」そうです。

 「誰でもあんな状態になったら天狗になるさ。 天狗にならんかったら、よっぽどの変わりもんか機械だ。 引っ掛かりもしたよ。 でもな、大事なのは天狗になっている自分に何時で気がつくかだよ。」

 

経営は面白い

 「ゴリラの鼻くそ」が最盛期の頃を振り返ると、岡社長は売って売りまくった営業マンでしかなかった。

 儲けは決算してみると僅かしか残っていない。

 「価格交渉の段になって、売値の七十%を提示したらお客様は難しい顔をしているんだ。初めての取引なので、じゃあ六十五%にしますと言っても、まだ困ったような顔をしてるんだ。意地になって六十%で良いですわ。と、言ってしまうところがあった。実はお客様は六十九%、六十八%にしてくれる事を期待してたんだ。」

 「あの頃は経営者じゃなかったな。「ゴリラの鼻くそ」の売上げは最盛期より落ちたけど、財務が読めるようになった今の方が財務体質は良いよ。財務が読めるようになって経営を楽しめるようになったね。」と。

 家を建て替える事になり「明治四十二年 大勘定帳」と表書きされた曾祖父の代の帳簿が見つかり、明治四十二年に先祖は財務帳票をキチンとつけていた事に社長は驚いたそうです。

 「財務がしっかりしていないとダメ。財務を読めない人が経営してはダメ。」とその時あらためて思われたそうです。

 

レッドオーシャンとブルーオーシャン

 競争の激しい既存の市場を「レッド・オーシャン(赤い海、血で血を洗う競争の激しい領域)」とし、競争のない未開拓市場である「ブルー・オーシャン(青い海、競合相手のいない領域)」の話をされました。

 社長のご商売は「ブルーオーシャン」だと。

 平田市でナンバーワンの酒屋をされていた事もあったそうです。

 競合相手が乱立し始めてレッド・オーシャンになり始めた時に見極めをつけ、その後に「ゴリラの鼻くそ」の大ヒットへ繋がるわけですが「人と違う事ができたから売れた。」と、常に分析し続ける大切さを教えて頂きました。

 

事業継承

 岡社長は昭和29年生まれの57歳。

 1年半前に息子(慎太郎)さんが帰って来られて、先祖が残した大勘定帳が見つかってからは「事業継承」が社長にとって最大の感心だそうです。

 「私の賞味期限は九回表まで来てる。

 「ゴリラの鼻くそ」をローギアからトップギアまで一気に入れて全国区にした私だけど、今のヒット商品「豆菓子職人がつくるなつかし岩納豆」はセカンドギアからどうしてもサードギアへ上がらんかったのをこいつ(慎太郎さん)はトップギアまで持って行きよった。

 県内にある馴染みのスーパーへは私の営業で売れたから、県外でも同じように行けると思ったが全く売れないだよ。

 データだとかお客さんが求めるものがもう違って来てるんだわ。

 私のやり方だけではもう通用しない事が良くわかった。」と。

 

 だから、青年会議所や商工会、中小企業家同友会へも自分(慎太郎さん)から入っていろんな先輩から学んで欲しいと。

 危惧されている事も。

 「青年経済団体へ入ってダメになる奴が多い。事業に身を入れずに活動ばっかりの毎日になって大切な20代・30代で事業の準備運動をせず、40代・50代になって全力疾走しろと言われても無理だろう。でも大切な人脈を作るとか、上手活かしている人がいる。あいつもそうして欲しい。」と。

 今頃になってやっと準備運動を始めた私には胸が痛くなるお話を頂きました。

 後継者には「熱いものは熱いこと」を自らが触って学ぶ大切さも話を頂きましたので、意地悪な質問をしてみました。

 「(私)明らかに騙されているだろうな。明らかに失敗するだろうな。と、社長から見て思える事へ息子さんが手を出そうとした時に社長はどうされますか?」 すると社長は「九割はスルーするだろうな」と。
 二時間半に渡り今回お話頂いた内容は、次の代を継承していく息子さんに伝えたい事だったと思います。そして、その次の代へ。

 事業継承の難しさは、そこにもあるように思いました。

 

有限会社 岡 伊三郎商店

代表取締役 岡 和 正 氏
島根県出雲市平田町2260-23

岡ビル二階

電話:0853-62-2048

 

平成23年10月

 



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